英国金融大手バークレイズがCO2除去の大型契約 強化岩石風化プロジェクトに投資

村山 大翔

村山 大翔

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英国金融大手バークレイズ(Barclays)は9月24日、クライメートテックのUNDOと提携し、6,538トンの二酸化炭素を大気中から永続的に除去する契約を締結した。英国の企業が炭素除去(CDR)事業者と結ぶオフテイク契約としては過去最大規模であり、CDR市場拡大に向けた重要な一歩となる。

今回の契約では、カナダ・オンタリオ州の1万エーカー(約4,000ヘクタール)の農地に細かく砕いたケイ酸塩岩を散布する。岩石が風化する過程で二酸化炭素を吸収し、土壌を改良しながら長期的に炭素を固定する。

バークレイズのサステナブル・トランジションファイナンス部門トップであるダニエル・ハナ氏は「スコープ1と2の排出を95%削減した上で、永続的なCDRに投資する。UNDOの岩石風化はスケーラブルな解決策であり、先駆的だ」と述べた。

岩石風化法の可能性

強化岩石風化(Enhanced Rock Weathering, ERW)は、二酸化炭素を炭酸水素塩に変換し、最終的に海洋へ運ぶ自然プロセスを加速させる。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、この技術を大規模に展開すれば年間最大40億トンのCO2を除去できると試算しており、2050年までに必要とされる炭素除去量の約4割に相当する。

UNDOはすでにマイクロソフト(Microsoft)やブリティッシュ・エアウェイズ(British Airways)などと提携し、2025年4月には総額1億ドル(約150億円)の「XPRIZEカーボンリムーバル」競技で世界4社の受賞者の一つに選ばれた。同社のジム・マンCEOは「今回の契約はUNDOが急速に事業拡大できることを示す強い信任票だ」と強調した。

保険がもたらす拡大の信用

今回の契約は、専門保険会社CFCの保険引受により実現した。CFCイノベーション部門責任者ジョージ・ビーティー氏は「保険は金融機関に信頼性を与え、より多くの資金を動員する鍵だ」と述べ、保険が炭素除去市場拡大を下支えする役割を示した。

バークレイズの気候戦略との位置づけ

バークレイズは2018年以降、自社の温室効果ガス排出量を大幅に削減し、再生可能電力への切り替えや不動産の効率化を進めてきた。2024年にはサステナブル関連の事業で約5億ポンド(約950億円)の収益を上げ、さらに2億3,900万ポンド(約460億円)を気候テクノロジー企業に投資している。

UNDOとの提携は、同社が自社の排出削減に加え、世界規模のCDR市場の形成に貢献する姿勢を示すものだ。今後、UNDOは農業コミュニティと連携しながら年間数百万トン規模の岩石散布を目指し、将来的には10億トン規模のCO2除去を掲げている。

展望

今回の合意は、科学、金融、農業を結び付けて恒久的かつ高品質な炭素除去を進める新たなモデルを示す。気候変動の加速に直面する中で、強化岩石風化のような自然ベースの技術は今後ますます不可欠となる。

参考:https://un-do.com/resources/blog/barclays-backs-undo-in-landmark-carbon-removal-deal/?trk=public_post_comment-text