Appleがリストア・ファンドで紅杉林再生 高品質カーボンクレジット創出へ

村山 大翔

村山 大翔

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米アップル(Apple)は9月25日、環境団体ザ・コンサベーション・ファンド(The Conservation Fund)と協力し、カリフォルニア州メンドシーノ郡のグアララ川流域に広がる約1万4,000エーカー(約5,700ヘクタール)の紅杉林を保護・再生する新規プロジェクトへの投資を発表した。取り組みはアップルの「リストア・ファンド(Restore Fund)」の一環で、森林の持続可能な管理と炭素吸収の強化を通じて高品質のカーボンクレジットを創出する狙いがある。

アップルの環境・政策・社会イニシアティブ担当バイスプレジデント、リサ・ジャクソン氏は「森林は大気中の二酸化炭素を取り除く最も強力な技術の一つだ。私たちの投資は炭素除去(CDR)だけでなく、生物多様性や地域経済の強化にも資する」と述べた。

アップルは2030年までにサプライチェーンを含む全事業でカーボンニュートラルを達成する方針を掲げている。2015年比で排出量の75%削減を目指し、残余分はカーボンクレジットでオフセットする計画だ。2030年には年間960万トンのCO2除去を見込んでおり、今回の紅杉林保全もその柱となる。

ザ・コンサベーション・ファンドのラリー・セルツァー最高経営責任者(CEO)は「米国の森林は2050年までに1,300万エーカーが消失の危機にある。アップルとの協力は、森林を守りながら地域経済を支える強力なモデルだ」と強調した。

リストア・ファンドは2021年にゴールドマン・サックスと国際環境NGOコンサベーション・インターナショナルと共に設立され、2023年にはクライメート・アセット・マネジメントが新たに加わった。2025年にはアップル自身による米州での直接投資も拡大している。台湾積体電路製造(TSMC)や村田製作所などの主要サプライヤーも出資しており、業界横断的な取り組みとなっている。

今回のプロジェクトでは森林成長に伴う炭素吸収量を定期的に測定し、その結果に基づいてカーボンクレジットを発行する。アップルは既にメイン州やノースカロライナ州の森林保全、ワシントン州の温帯雨林保護など米国内で複数の森林プロジェクトを進めており、今回の紅杉林もその延長線上に位置付けられる。

同社は同時に、インドのマングローブ林保護やジェーン・グドール研究所の教育プログラムなど、世界各地の自然保全活動への助成金も新規発表した。アップルはこうした取り組みを通じて、森林由来の炭素除去の質を高め、自然を基盤としたカーボンクレジット市場の信頼性向上を目指している。

参考:https://www.apple.com/newsroom/2025/09/apple-launches-new-project-to-protect-and-restore-california-redwood-forest/