菌根菌「ルーテラ」でCO2長期固定化 Rootella CarbonがVerra基準でカーボンクレジット発行へ

村山 大翔

村山 大翔

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イスラエルのバイオ農業企業グラウンドワーク・バイオアグ(Groundwork BioAg)と、北米最大級のカーボンクレジット開発・販売会社アニュー・クライメート(Anew Climate)は9月22日、今後3年間で累計50万トンのCO2除去量に相当する土壌由来のカーボンクレジットを商業化すると発表した。両社は第三者認証を経たカーボンクレジットを、Verraの国際基準VM0042に基づいて市場に投入する計画である。

今回対象となるのは、グラウンドワークが展開する「ルーテラ・カーボン(Rootella Carbon®)」プログラムで生成されるカーボンクレジットである。同プログラムは菌根菌(マイコリザ)資材「ルーテラ」を用いた農業実践を通じ、土壌中に炭素を長期固定化する仕組みを構築している。農家はこのプログラムに参加することで、自らが固定化したCO2をカーボンクレジットとして販売でき、販売収益の最大70%を受け取る新たな収益源を得る。

独立検証機関SCSグローバルは2023年の実地データに基づき、ルーテラ導入農地(9,000エーカー)で平均1エーカーあたり3.89トンのCO2が永続的に固定化されたと認定した。この水準は、米環境保護庁(EPA)や学術誌が報告してきた慣行農法ベースの0.3〜1.1トンを大きく上回り、既存の再生型農業プログラムを凌駕する。

グラウンドワークの最高経営責任者(CEO)アロン・ウェルバー氏は「アニューのような世界的リーダーとの連携と第三者認証により、菌根菌ベースの新たなカーボン資産クラスが確立する。これは気候変動対策と農業の持続性にとって極めて重要な柱になる」と述べた。

また、共同創業者で最高成長責任者のダン・グロツキー氏は「ルーテラ・カーボンは米国、カナダ、ブラジルの2億7,000万エーカーの農地に適用可能性があり、カーボンクレジット市場への扉を大きく開く。さらに水保持力や生物多様性、収量向上といった副次的効果も得られる」と強調した。

一方、アニュー・クライメートの環境商品部門プレジデント、ジョシュア・ストラウス氏は「ボランタリーカーボンクレジット市場は科学的に頑健でスケーラブルな解決策を求めている。ルーテラ・カーボンはその双方を満たし、農業者、サプライチェーン、地球全体に利益をもたらす」と指摘した。

ルーテラ・カーボンは、菌根菌が土壌中で「鉱物結合有機物(MAOM)」を形成するプロセスを活用し、従来数十年とされた炭素固定期間を数千年規模に延ばすとされる。既に50万エーカー以上の農地で導入が進み、近くVerra基準に基づく正式なカーボンクレジット発行が予定されている。

今回の取り組みは、農地を「炭素吸収源」として再定義し、気候変動対策と農家収益の両立を実現する新たなモデルとなる。両社は今後もカーボンクレジット市場と農業現場を橋渡しし、企業のネットゼロ達成に向けた選択肢を広げる構えだ。

参考:https://groundworkbioag.com/groundwork-bioag-and-anew-climate-announce-collaboration-to-commercialize-500000-tons-of-durable-soil-carbon-removal-credits-tripling-agricultural-soil-carbon-sequestration-rates-and-settin/