米炭素貯留企業フロンティア・カーボン・ソリューションズ(Frontier Carbon Solutions)は9月23日、カナダのマンゴローブ・システムズ(Mangrove Systems)と提携し、バイオマス由来のCO2を鉄道で輸送する旗艦プロジェクト「スプリント(Project Sprint)」に同社のデジタル測定・報告・検証(dMRV)プラットフォームを導入すると発表した。米国中西部から山岳西部にまたがる大規模バイオエネルギー炭素回収・貯留(BECCS)事業で、透明性の高いカーボンクレジット発行を可能にする狙いだ。
プロジェクトでは、バイオマス発電などで回収したCO2を液化し、専用貨車に積み込んで既存の鉄道網を使いワイオミング州のグレンジャー・カーボンターミナルまで輸送。そこからスウィートウォーター・カーボン貯留ハブにあるクラスVI認可井戸へ注入し、地下に永続的に貯留する。第1段階の処理能力は年間50万トンで、北米最大級の炭素除去(CDR)拠点の一つになる見通しだ。
マンゴローブのシステムは、バイオマス調達から貯留に至るまでCO2フローをリアルタイムで追跡。第三者検証やPuro認証に対応し、データの完全性を担保したうえでクレジット発行を加速する。これにより、プロジェクト全体の「運営・商業・財務のリスク低減」が期待されている。
フロンティア社の開発責任者アリシア・サマーズ氏は「マンゴローブのBECCS専門知識により、回収・輸送・貯留するすべてのトン数が信頼できる検証データに裏付けられる」と述べた。マンゴローブのブランドン・ヴラー最高経営責任者(CEO)も「当社のMRV基盤が、カーボン市場が求める透明性を提供する」と強調した。
鉄道によるCO2輸送は、長大なパイプライン建設を回避できる新たなモデルとして注目を集めている。今後の課題は、年間50万トン規模からいかに拡張していくか、そしてカーボンクレジットの市場受容性をいかに確保するかにある。スプリントの進捗は、北米における大規模BECCSの商用化を占う試金石となりそうだ。
参考:https://www.mangrovesystems.com/press/frontier-selects-mangrove-digital-mrv-beccs-project