IMOも注目 中国で始動した船上CO2回収システム実証プロジェクト

村山 大翔

村山 大翔

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中国の海運脱炭素化に向けた大規模実証が進んでいる。海事装備大手のヘッドウェイ・テクノロジー・グループ(Headway Technology Group)は9月、浙江省舟山の龍山造船所で5万7,000重量トン級のばら積み船「粤電56」に遠心式の船上炭素回収システム(OCCS)を初めて搭載したと発表した。中国国内初導入であると同時に、世界でも初めての商業応用事例となる。

このプロジェクトは、ヘッドウェイの主導で、浙江自由貿易試験区舟山管理委員会、広東エナジー・グループ、中国能源新能源技術研究院、龍山造船所、中国船級社上海規則研究所が参画し、政策的・技術的な後押しを受けた。

独自開発されたOCCSは、二酸化炭素(CO2)の吸収・再生、液化、液化CO2(LCO2)貯蔵までを一体化した設計を特徴とする。重力式スクラバーに代わり遠心力場を利用することで、接触効率を高めつつ消費エネルギーを低減、設置の簡素化と小型化を実現した。ヘッドウェイによると、捕集効率は90%以上、純度は99.6%以上に達するとしている。

さらに、中国能源新能源技術研究院が開発した高性能吸収塔「GNX-3」を採用し、処理能力を向上させている。

回収されたLCO2は、最新の「船上液化二酸化炭素荷役指針」に従い専用輸送船で舟山のパイロット港に陸揚げされる。そこで水電解によるAEM方式の水素生成や固体水素貯蔵技術と組み合わせ、メタノールやアンモニアなどの合成燃料に利用される計画だ。これにより、CO2の捕集から燃料再利用までを一貫した閉ループのグリーンライフサイクルとして構築する。

国際海事機関(IMO)では船上炭素回収を「代替燃料が普及するまでの現実的な移行手段」と位置づけており、世界的に導入の動きが広がっている。ただし、燃費増によるコスト、吸収液の交換・保守、LCO2の荷役や輸送インフラ整備など課題は残る。

ヘッドウェイはすでに2024年、中国能源建設集団水素エネルギー(CEEC Hydrogen Energy)とメタノール・アンモニア・水素の協力協定を結んでおり、船上回収と合成燃料を結びつけた事業展開を加速させている。今後は国内外の港湾インフラの整備が普及のカギとなる見通しだ。

参考:http://en.headwaytech.com/646.html