米カリフォルニア州パロアルトのクライメートテック企業DACLabは9月18日、炭素除去コストを大幅に削減する新型直接空気回収(DAC)システム「Kelvin」を発表し、シードラウンドで300万ドル(約4億5,000万円)を調達したと明らかにした。投資家には、ディスコード初期投資家のピーター・レラン氏、シルバーレイク共同創業者デーブ・ルー氏、ウーブンアース・ベンチャーズのジェーン・ウッドワード氏らが名を連ねる。
今回の発表で注目されるのは、DACLabが従来比でエネルギー消費を50%削減しつつ、トン当たり500ドル(約7万5,000円)でCO2を回収できる実証技術を示した点である。さらに数十万トン規模では、補助金なしでトン当たり250ドル(約3万7,000円)へのコスト低減が可能だとしている。レラン氏は「Kelvinはe-fuel製造や大規模貯留プロジェクト向けに市場投入可能な現実的な解」と強調した。
世界のボランタリーカーボンクレジット市場では、拡張可能なDAC技術の不足により約40億ドル(約6,000億円)分のカーボンクレジットが凍結状態にあるとされる。DACLabの技術が普及すれば、この停滞を解消し、今後2035年に1,250億ドル(約19兆円)に達すると予測されるカーボンクレジット市場の成長を後押しする可能性があるとしている。
DACLabの共同創業者兼CEOアディティア・バンダリ氏は「Kelvinはモジュール式で即導入可能なため、持続可能航空燃料(SAF)や炭素利用、貯留事業者に新たな収益源を提供する」と述べた。特許出願中の温度真空スイング吸着(TVSA)技術により、通常100度以上を必要とするDAC再生プロセスを70度で実現し、消費電力は業界最低水準の1トン当たり1,800kWh未満に抑えた。
同社はすでにシェルと共同で排出源捕集プロジェクトを実施した実績があり、100トン規模の「Kelvin Pod」で2,000時間超の運転試験を完了している。今後は1,000トン規模の「Kelvin Module」を商用展開し、大手CO2貯留事業者や航空燃料メーカーとの提携を模索している。
DACLabの顧問で「ネガティブカーボン排出センター」創設者のクラウス・ラックナー氏は「産業規模展開へ移行する市場において、DACLabは主要課題をほぼ解決した」と評価した。
コストとエネルギーの両面で新基準を打ち出したKelvinの商用化は、カーボンクレジット市場の流動化に加え、今後のe-fuel普及と大規模CO2貯留の加速に直結する見通しだ。
参考:https://www.prnewswire.com/news-releases/daclab-launches-out-of-stealth-with-most-cost-efficient-dac-system-named-kelvin-aimed-at-large-e-fuels-and-co2-sequestration-markets-302561081.html