インドのカーボンクレジットデベロッパー、エクイリブリアム(Equilibrium)が9月19日、シードラウンドで300万ドル(約4億5,000万円)を調達した。出資したのは同国のベンチャーキャピタル3社で、調達資金は農業や森林分野を中心とした炭素除去(CDR)プロジェクトの拡大に充てられる。インドでは2026年にコンプライアンスカーボンクレジット市場(ICM)の開始が予定されており、先行的な事業展開が注目を集めている。
エクイリブリアムは農林業や沿岸生態系を活用した自然由来のCDRに強みを持ち、現在9州で8件の案件を推進中だ。対象面積は12万ヘクタールに及び、15万人の小規模農家が参加、累計で2,000万トンのCO2削減・除去を目指す。同社はARR、再生型農業、マングローブ再生、バイオ炭生産の4分野を展開し、廃棄物を資源化する統合型モデルで効率性を高めている。
最大の特徴は独自のデジタル測定・報告・検証(dMRV)基盤だ。衛星画像、現地データ、自動化された報告機能を組み合わせ、土壌炭素や生物多様性、農家の社会的利益まで数値化する仕組みを構築している。これにより「追加性」「永続性」「検証可能性」を備えた高品質なカーボンクレジットの供給を狙う。
創業者兼CEOのシッダンス・ジャヤラム氏は「気候レジリエント農業への永続的な転換を実現するには、長期資金と忍耐強い投資家が必要だ。今回の資金調達はその一歩だ」と述べた。
今回のラウンドに参加したカラアリ・キャピタル(Kalaari Capital)のサンパス氏は「エクイリブリアムは農家の利益を前提に、厳密な実行力とデジタル基盤を兼ね備えている。インドが高品質CDRのリーダーとなる潜在力を感じる」と語った。
世界のカーボンクレジット市場は今後も更なる拡大が見込まれており、特に9割を占めるコンプライアンスカーボンクレジット市場では、高品質で検証可能な自然由来のカーボンクレジットの不足が課題となっている。インドのICM創設が迫る中、エクイリブリアムのモデルは国内外の需要を取り込む可能性が高い。
次の焦点は、バイオ炭事業の拡大とdMRVの外販化である。同社は既に2百万ドル(約30億円)のファイナンス枠を確保し、1万人以上の農家を支援済み。今後は2026年のICM開始に向け、カーボンクレジット発行体制の整備がカギを握る。
参考:https://www.linkedin.com/posts/activity-7374695537914146817-FKKN