ATECが23億円調達 IoT調理器「eCook」で家庭単位のカーボンクレジット創出

村山 大翔

村山 大翔

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オーストラリア発の調理機器開発企業のエーテック(ATEC)は9月18日、スマート電気調理器「eCook」の普及拡大に向け、1,550万ドル(約23億円)の資金を調達したと発表した。投資は英投資会社ライトロック(Lightrock)とシンガポールのベンチャーキャピタル、トライレック(TRIREC)が主導し、仏シュナイダーエレクトリック(Schneider Electric)のアジア向けエネルギー基金も参加した。

同社は今後3年間でバングラデシュ、カンボジア、マラウイ、ネパールを中心に最大20万台のeCookを導入し、100万人規模の生活改善を目指す。同製品はIoTを活用して各家庭の使用データをリアルタイムで収集し、燃料削減によるCO2排出回避量を算定。炭素ブロックチェーン台帳と連動させることで、家庭単位で検証可能なカーボンクレジットを発行できる点が特徴だ。

世界ではいまも3分の1の人々が木材や炭などの汚染燃料で調理しており、毎年3.2百万人が煙害で早世している。排出量は年間10億トンに達し、航空業界全体を上回るとされる。エーテックはこれまでに2.5万台を普及させてきたが、今回の資金調達で事業をアジア・アフリカに一気に拡大する。

エーテックのベン・ジェフリーズ最高経営責任者(CEO)は「すべての家庭が煙のない台所を持つべきだ。その実現には、家庭が自らの炭素資産を活用し、透明なデータに裏付けられた形で世界の脱炭素パートナーと直接取引できる仕組みが必要だ」と述べた。

投資家からも信頼性が評価されている。ライトロックのエネルギーアクセス責任者アデミドゥン・エドソムワン氏は「20億人以上がいまだ清潔な調理環境を持たない。エーテックのIoT調理器は透明性の高いカーボンクレジット創出を可能にし、信頼性ある市場拡大に貢献する」と指摘した。

エーテックは利用者が調理器の使用量に応じて直接炭素収入を得られる「Cook-To-Earn」制度を導入。これにより購入時の負担を軽減しつつ、利用拡大を促している。既存の脱炭素パートナーには仏エンジー(ENGIE)、スイスのマイクライメイト(myclimate)、リブリフッズ基金(Livelihoods Funds)などが名を連ねており、今回の調達でカーボンクレジット供給を一段と強化する。

ATECは「家庭ごとに裏付けられた炭素データ」を武器に、この成長市場で存在感を高める構えだ。

参考:https://www.atecglobal.io/news/atec-raises-15m-to-scale-tech-driven-clean-cooking-and-emissions-reduction-across-asia-africa