日本郵船 DAC由来のカーボンクレジットを追加購入 1PointFiveと2度目の契約

村山 大翔

村山 大翔

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日本郵船(NYK)は9月17日、米国の炭素回収・利用・貯留(CCUS)企業ワンポイントファイブ(1PointFive)と、直接空気回収・貯留(DACCS)技術によるカーボンクレジットの購入契約を締結したと発表した。これは同社にとって2度目の同社からの購入であり、国際海運の「残余排出」をカーボンオフセットする戦略を強化する狙いがある。

契約対象となるカーボンクレジットは、米テキサス州で建設中のDAC施設「ストラトス(STRATOS)」で生成される予定で、年内に稼働開始を予定している。同施設は大気中のCO2を直接回収し、地下に貯留することで耐久性の高い除去を実現する。

NYKは2023年11月に公表した「日本郵船グループの脱炭素ストーリー」において、2050年までの温室効果ガス排出ネットゼロを掲げている。同社は燃料効率改善や次世代燃料の導入を進めているが、海運業特有の性質上、一部の排出は不可避と見ている。そのためDACCSによる信頼性の高いカーボンクレジットを利用し、残余排出をカーボンオフセットする戦略を明確にした。

日本郵船の代表取締役副社長の河野明氏は「運航効率化やバイオ燃料への転換を進めても、排出ゼロには至らない。だからこそ『削減では解消できない排出』に対し、炭素除去は不可欠だ」と述べた。

ワンポイントファイブ社の社長兼ゼネラルマネージャーのアンソニー・コットーネ氏は「日本郵船は脱炭素分野でリーダーシップを示している。DACは永続性と検証可能性を兼ね備えた解決策だ」と強調した。

NYKはこれまでにも炭素除去に関する取り組みを拡大している。2024年12月にはENEOSと、ストラトス由来のCDRカーボンクレジットを組み合わせた舶用燃料の5年間供給契約を結んだほか、2025年5月にはスイスのクライムワークス(Climeworks)と3年間の契約を締結し、同社の「ポートフォリオ型」炭素除去サービスを利用している。

国際海運は年間約10億トンのCO2を排出しているとされ、そのうち効率化や低炭素燃料導入後も約10%、すなわち1億トン程度が残余排出として残る可能性がある。NYKは今回の契約を通じて、海運業界全体の脱炭素化に寄与するとともに、グローバルな炭素除去市場の成長に弾みをつけたい考えである。

参考:https://www.nyk.com/english/news/2025/20250918_01.html