米商品先物取引委員会(CFTC)は9月10日、ボランタリーカーボンクレジットに基づくデリバティブ契約の上場に関する2024年10月の最終指針を正式に撤回した。従来の指針は、取引所がボランタリーカーボンクレジット先物を設計・上場する際に透明性や信頼性を担保することを目的としていたが、CFTCは既存規制で十分対応可能だと判断した。
CFTCは撤回通知の中で、商品取引所法第5条cや規則第38部および40部がすでに包括的な規制枠組みを提供しており、ボランタリーカーボンクレジットに特化した指針は「限定的な価値しか持たなかった」と説明した。さらに、特定の資産クラスに過度な焦点を当てることで、規制適用に混乱や不整合を招くおそれがあると指摘した。
同委員会は「ボランタリーカーボンクレジット契約は他のデリバティブと同様に評価されるべきであり、一律の規制枠組みが市場の透明性、公平性、健全性に最も資する」と強調した。
この方針転換は、バイデン政権下で策定された気候関連規制を縮小しようとするトランプ政権の規制緩和路線と軌を一にしている。2024年に示されたCFTC指針は、追加性や恒久性、検証手続きの厳格さなど、環境的な信頼性を重視する姿勢を打ち出していた。しかし撤回によって、今後は各取引所が独自に判断し、既存の一般規則に基づいてボランタリーカーボンクレジットデリバティブを設計・上場することになる。
ボランタリーカーボンクレジット市場はプロジェクトの種類や認証基準が多様であるため、取引所にとっては上場判断が難しい分野である。指針撤回により一律の指標が失われ、規制当局の審査方針が不透明化する懸念もある。環境商品を扱う市場参加者は、自社の評価プロセスやコンプライアンス体制を見直す必要に迫られる可能性がある。
CFTCは今後も既存規則に基づいて個別案件を審査するとしており、市場の透明性や信頼性をどこまで担保できるかが注視される。