カーボンドローダウン・イニシアチブ(Carbon Drawdown Initiative)は9月15日、二酸化炭素除去(CDR)の購入を簡素化するオンラインディレクトリ「cdr-shops.com」を公開した。従来は数週間を要していた手続きが、クレジットカード決済による「2分間のチェックアウト」で可能になることを目指している。
同サイトは、信頼性のあるCDR供給者を集めた買い手向けインデックスで、購入方法や最低購入量、価格帯、納品時期、除去手法などを一覧できる。さらに永続性や測定・報告・検証(MRV)、独立レジストリ登録の有無など、購入時に重視すべき要素を平易に解説したガイドを併設している。
背景には、CDR由来のカーボンクレジット市場の需給集中がある。2025年第2四半期にはマイクロソフトが契約済みカーボンクレジットの約93.8%を占める一方、実際の納品は依然として限られ、即時対応可能なバイオ炭に偏っている。こうした状況では、中小企業や個人などの「小口買い手」が行動に移しにくいとされる。
同団体は自ら200トン規模のカーボンクレジットを購入しようと試みたが、多数のメール往復や国際送金が必要となり、迅速な購入はほぼ不可能だったという。代表者は「一部業者だけが即時購入を提供していたが、大半は煩雑な手続きに依存していた」と振り返る。
新ディレクトリはこうした摩擦を取り除く狙いがあり、最初は0.5〜10トン規模の小口購入を複数ショップで一括管理できる。納品時期を明示し、認証書類をダウンロードできる仕組みも備えることで、レポーティングにも活用可能だ。
市場理論上の「冷スタート問題」と呼ばれる課題にも対応する。これは、買い手と売り手が互いに存在を確認できなければ市場が立ち上がらない現象を指す。カーボンドローダウン・イニシアチブは「まずは小規模な原子ネットワーク(atomic network)を形成し、即納可能な供給者と小口買い手を結びつけることが重要だ」と強調している。
同サイトは現在、オンライン決済と明確な納品スケジュールを持つCDRショップの登録を呼びかけている。また、個人や中小企業に対しても「1トン単位のマイクロ購入から始め、定期的なサブスクリプションへと広げてほしい」と促している。
カーボンクレジット市場は大型契約による成長を見せつつも、供給実績や小口アクセスに課題が残る。cdr-shops.comが「2分で始められる除去購入」を普及させることができれば、長期的な市場基盤拡大に向けた突破口となる可能性がある。