米国船級協会(ABS)は9月11日、三井海洋開発(MODEC)と商船三井(MOL)が共同開発する「液化CO2浮体式貯留・圧入設備(FSIU)」に対し、基本承認(AiP)を付与した。ミラノで開催された国際会議「Gastech 2025」で承認証が授与された。
このFSIUは、年間最大1,000万トンのCO2を直接海底貯留層へ圧入できる能力を持ち、陸上受入基地やパイプラインを不要とする点が特徴だ。貯蔵タンクは総容量10万立方メートル以上を確保し、最大9万立方メートル規模のCO2輸送船からの受け入れも可能とされる。
ABSのミゲル・ヘルナンデス上級副社長は「国際エネルギー機関(IEA)は2030年に世界のCCUS能力が年間4億3,500万トンに達すると予測している。浮体式の貯留・圧入設備は、安全かつ効率的な炭素隔離を実現する上で重要だ」と述べた。
MODECの上原常務執行役員(プロジェクト開発担当)は「各要素はFPSOやCO2圧入で培った技術に基づいており、MOLの輸送ノウハウを統合することで、1トンあたり5ドル(約740円)以下のコスト実現を目指す」と語った。
FSIUは艦尾でのタンデム積み込みと舷側での横付け積み込みの両方に対応し、途切れない圧入運転を可能にする。船体設計は三菱造船と共同で行われ、係留システムにはソフェック製タレットを採用した。さらに、自船の排出削減のためディーゼル発電機に炭素回収装置を組み込み、環境負荷を低減している。
今回の浮体式設備は、MOLが手掛ける液化CO2輸送とシームレスに接続し、洋上での大規模CO2隔離を可能にする。これにより、アジアを含む多様な海域で柔軟なCCUS展開が見込まれる。
MODECは中期経営計画「2024〜2026」で掲げる「浮体式代替エネルギー設備」の一環と位置づけており、商業化に向けた技術成熟を進める方針だ。両社の取り組みは、世界的な脱炭素化競争の中で、日本発の洋上CCUS技術を確立する試金石となる。
参考:https://www.modec.com/news/2025/20250911_pr_FSIU-AIP_ABS.html