7月30日に発表されたEcoVadisの2025年報告書によると、アジア太平洋地域(APAC)の企業が、2024年の環境評価で初めて北米を上回った。この報告は、世界89,000社のデータをもとに作成されており、グローバルな持続可能性の流れに大きな変化が起きていることを示している。
フランスの評価機関EcoVadisが公表した「グローバル・サプライチェーン持続可能性リスク・パフォーマンス指数(2025年版)」では、世界中でサステナビリティに関する企業の取り組みが大きく進展していることが明らかになった。過去5年間で企業の評価件数は167%増加し、2024年だけで約50,000社が新たに評価を受けた。
とりわけ注目されたのはアジア太平洋地域(APAC)で、2024年の1年間で「環境」「労働・人権」「倫理」「責任ある調達」の4つの分野で、企業の平均スコアが3ポイント向上。特に環境分野で北米を上回り、サステナビリティの新たなリーダーとして台頭している。
一方で、倫理や労働・人権に関する評価では、依然として欧米の水準に届いておらず、さらなる改善の余地がある。とはいえ、責任ある調達においてもAPACは北米との差を急速に縮めており、持続可能なサプライチェーンの構築に向けた進展が見られる。
地域別では、アフリカと中東が前年比42%の成長率で最も大きく伸び、欧州が33%、中国が37%の増加となった。中国はこの結果、評価件数で米国を抜いて2位に浮上し、1位はフランスが維持した。
ただし、初めて評価を受けた企業の3分の1以上が「高リスク〜中リスク」と判定されており、特に米国(45%)や中国(62%)ではその割合が高い。これは、企業の多くが自社やサプライヤーのリスクを十分に把握できていないことを意味する。
一方、2回以上評価を受けた企業の86%は「リスク閾値(スコア45)」を上回っており、継続的な取り組みが改善につながっていることが示された。2024年の全体平均スコアは53.4となり、多くの企業が「良好」なレベルに達している。
EcoVadisの最高評価責任者シルヴァン・ギュヨトン氏は、「政治的な議論が多い中でも、サプライチェーンの実績が企業の本気度を物語っている」と語り、持続可能性への継続的な取り組みが「リスク削減」「コスト削減」「供給安定」「成長」につながると強調した。
こうした動向は、カーボンクレジットや炭素除去(CDR)における評価にも影響を与えており、企業の調達方針や投資戦略を見直す動きが加速する可能性がある。今後、企業がESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みを本格化させる中で、サステナビリティは単なる「遵守」から「競争力の源」へと変わりつつある。