カーボンクレジット市場向け保険を手がけるイギリスのキタ(Kita)は9月9日、土壌有機炭素(SOC)を使ったカーボンクレジット事業を対象に、新しい「非履行保険(Non-Delivery Insurance)」を始めると発表した。SOCは自然の力を活用した炭素除去策として注目されているが、成果の不確実性から投資が進みにくい分野だった。キタは保険を導入することで、投資を呼び込み、市場の成長を加速させたい考えだ。
キタはロイズ・オブ・ロンドンの承認を受けて保険を提供しており、森林保全や農業を活用した炭素除去事業を支援してきた。今回SOCを対象に加えることで、再生型農業や草地管理などを通じた炭素除去も包括的にカバーする。SOC事業は、天候や測定の誤差などで炭素吸収量が予想より少なくなるリスクが大きい。新保険はこうした「カーボンクレジット未達成リスク」を補償する仕組みだ。
SOCは地球上で最大の炭素貯蔵庫とされる土壌に注目する仕組みで、農地管理を改善すれば少しの増加でも大きな効果を生む。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告では、SOCの強化によって年間最大26億トンのCO2を吸収できる可能性があるとされ、これはインドの年間排出量を上回る規模だ。
キタの共同創業者で最高引受責任者(CUO)のトム・メリマン氏は「SOCのような自然由来の解決策はネットゼロの実現に欠かせない。そのためには金融の仕組みが必要だ。当社の保険はそのための保護を提供する」と語った。
SOC事業は、気候変動対策に加えて、食料の安定供給や水の保持力の向上、農村地域の暮らしの改善など、多くのメリットをもたらすと期待されている。しかし、投資リスクが高いことが普及の妨げとなっていた。今回の保険によって、ボランタリーカーボン市場で高品質な自然由来クレジットの取引が増え、長期的な投資や金融商品としての活用も進む見通しだ。
参考:https://www.kita.earth/blog/kita-launches-soil-organic-carbon-insurance-product