「CO2規制の根拠」を撤回へ 米EPAが温暖化政策の土台を見直し

村山 大翔

村山 大翔

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米環境保護庁(EPA)は8月1日、温室効果ガスを「人の健康に悪影響を及ぼす」とした2009年の公式認定(エンデンジャーメント・ファインディング)を撤回する方針を正式に発表した。この認定は、CO2排出規制の法的基盤とされてきた。撤回が実現すれば、自動車や発電所の排出基準が失われ、脱炭素政策やカーボンクレジット制度にも影響が広がる可能性がある。

この提案は、トランプ前大統領とゼルディン新EPA長官のもとで進められている「規制見直し」の一環であり、米国史上最大規模の環境規制撤廃とも言われている。2009年に制定された認定は、オバマ政権が最高裁の判断を受けて出したもので、CO2などの温室効果ガスが人の健康や暮らしに害を及ぼすと判断された。

EPAのゼルディン長官は「この認定は議会の承認なしに進められたものであり、撤回により消費者の自由と経済の活力を取り戻せる」と述べた。もし撤回が確定すれば、電気自動車(EV)義務化なども含め、すでに定められている多くの排出規制が無効になる可能性がある。

エネルギー省の新しい報告書では、「CO2は毒性がなく、健康に直接害を及ぼすような物質ではない」として、これまでの規制の前提を疑問視する見解も出された。

ただし、環境団体や民主党議員は強く反発している。「規制がなくなれば、気候変動対策が大きく後退する」として、訴訟などの法的手段を検討している。今回の動きにより、CO2削減に貢献してきたカーボンクレジットやCDR(炭素除去)事業の市場にも、不確実性が生じる懸念がある。

また、規制撤廃の法的根拠として、2022年の最高裁判決で示された「重要政策は議会が決めるべき」との原則が使われている。これにより、連邦政府の温暖化対策は今後、議会の支持なしには進めにくくなる。

今後は、パブリックコメントを経て最終判断が下される見通しだが、司法の場での争いが長期化する可能性もある。米国の気候政策が大きく方向転換するかどうか、日本を含む各国のCDR市場関係者も注目している。

参考:https://www.epa.gov/newsreleases/what-they-are-saying-leaders-praise-epa-launching-largest-deregulatory-action-us