日印がJCM協力覚書に署名 「脱炭素プロジェクトを通じたクレジット創出」加速へ

村山 大翔

村山 大翔

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日本とインド両政府は8月7日、パリ協定第6条に基づく二国間制度「二国間クレジット制度(JCM)」の協力覚書に署名した。これにより両国は脱炭素技術の導入や資金協力を進め、削減・吸収された温室効果ガス(GHG)を貢献度に応じてクレジット化し、両国の国別削減目標(NDC)の達成に活用する。

今回の署名は、在インド日本国大使の小野啓一氏と、インド環境森林気候変動省のタヌマイ・クマール事務次官の間で行われた。インドにとってはパリ協定の下で初めての二国間協力であり、日本にとっては31か国目のJCMパートナーとなる。

環境省の浅尾慶一郎大臣は8月29日、東京で開かれた「日印経済フォーラム」で基調講演を行い、「JCMを最大限に活用し、気候変動対策と脱炭素技術の普及を両国協力で推進する」と強調した。同日発表された日印首脳共同声明と「次の10年に向けた日印共同ビジョン」でも、JCM覚書の署名が歓迎され、二国間の気候変動対策の強化が確認された。

インド政府はすでに優先分野として、再エネ由来の水素・アンモニア、圧縮バイオガス(CBG)、高排出産業の転換、炭素回収・貯留(CCS)などを挙げており、日本企業の貢献余地は大きいとみられる。JCMを通じて、民間資本を呼び込みながら経済成長と脱炭素を同時に実現する「モデルケース」となることが期待される。

JCMは、日本と相手国が技術・資金面で協力し、削減・吸収したGHGを両国で分配する仕組みである。2013年の運用開始以来、エネルギーや廃棄物分野を中心に約270件のプロジェクトが実施されてきた。今年4月には改正地球温暖化対策推進法に基づき、実施機関「JCM実施機関(JCMA)」として地球環境センターが指定され、制度の加速が図られている。

今後、環境省は経済産業省や外務省など関係省庁、JCMAと連携し、日印企業による具体的プロジェクトを推進する。浅尾環境相は「人類共通の課題である気候変動の解決と急速な経済成長の両立を目指す」と述べ、両国の協力を通じた国際炭素市場の拡大に意欲を示した。

参考:https://www.env.go.jp/en/press/press_00320.html#:~:text=Tanmay%20KUMAR%2C%20Secretary%2C%20Ministry%20of,6%20of%20the%20Paris%20Agreement%2C