フィリピン政府は、エネルギー部門におけるカーボンクレジット政策の導入に向けた準備を進めている。8月19日、エネルギー省(DOE)は公開協議を開き、クレジットの発行・管理・モニタリングに関する指針案を提示した。政策は再生可能エネルギー投資を呼び込み、排出削減を加速させ、パリ協定に基づく気候目標の達成を後押しする狙いだ。
DOEのフェリックス・ウィリアム・フエンテベリャ次官は、「政策はエネルギー部門を再構築するものであり、関係者に信頼性のあるカーボンクレジット生成と管理の手段を提供する」と述べ、透明性と検証可能性を重視する姿勢を強調した。
政策案は、削減量の検証可能性が担保されたプロジェクトを優先し、クレジットの発行から取引まで一貫した透明な仕組みを整えることを目指している。政府はこれにより、国内外からの投資を再エネや脱炭素プロジェクトへ誘導し、市場に対する信頼を高める考えだ。
背景には、フィリピンが掲げる国際協定上の約束がある。同国は2024年8月、シンガポールとともにパリ協定第6.2条の実施に関する協力覚書に署名した。同条項は国際的なカーボンクレジット取引を可能にする枠組みであり、同地域における炭素市場連携の基盤となる。
シンガポールはすでに2023年12月、石炭火力の早期閉鎖にカーボンクレジットを活用する「トランジション・クレジット・コアリション(Traction)」を発足。シンガポール企業ケッペルは、フィリピンのエイセン(ACEN)、テマセク傘下のジェンゼロ(GenZero)と提携し、バタンガス州の246MW石炭火力発電所の早期退役を進めている。
フィリピンDOEは今後、意見収集を経て政策を最終化し、エネルギー転換を推進する。次の焦点は、制度化の具体的スケジュールと、国際市場とのリンク強化に移る見通しだ。