パリ協定6条4項監督機関は、硝酸製造に伴うN2O(一酸化二窒素)排出の削減プロジェクトを、パリ協定6条4項メカニズム(PACM)の下でカーボンクレジット化する新方法論を採択した。
N2Oは温暖化係数がCO2を大きく上回る温室効果ガスであり、大気中濃度は1980年比で約40%上昇している。直近のNDCの97%が対象に含めるなど、各国の気候計画でも広く位置づけられている。
硝酸製造は主要な産業由来排出源である。
世界では400〜600の施設が稼働し、年間約7,000万トンの硝酸を生産、その多くは肥料製造に向けられる。とりわけ途上国では排出削減技術の導入が進んでおらず、本方法論は実証済み技術をこうした施設へ大規模に展開する道を開く。
監督機関議長のムクタジ・ステレキ(Mkhuthazi Steleki)は、実証済みの解決策が存在し即効性のある分野へメカニズムを拡大する動きだと述べた。副議長のジャッキー・ルエスガ(Jacqui Ruesga)は、方法論の採択を重ねるごとに高インテグリティな気候行動の手段が増えると説明した。
監督機関は同時に、実装を強化する二つの方法論的成果も採択した。
一つは、長期の脱炭素目標と整合しない高排出技術の固定化を回避するためのロックインリスク評価ツールである。もう一つは、プロジェクトが通常操業を超える削減であることの立証方法を厳格化する追加性立証基準の改訂である。
方法論専門家パネルでは追加の方法論の検討が進んでおり、クリーンクッキングや家庭部門のエネルギー利用など、気候面と持続可能な開発の双方で効果が見込まれる分野が候補に挙がる。カーボンクレジットの発行・追跡・利用を担うメカニズムのレジストリ(登録簿)整備も並行して進む。
編集部の視点
本方法論は、6条4項メカニズムが既存産業の削減系へ適用範囲を広げる段階的な拡充として位置づけられる。途上国を中心に削減技術が未導入の硝酸施設へ実証済み技術を展開する設計であり、メカニズムが実需を伴う実装段階へ移行しつつあることを示す。
ただし、硝酸製造のN2O削減はCDM下で大量のカーボンクレジットを生み、追加性と過剰発行が論点となった経緯もある。今回併せて採択された追加性基準の改訂とロックインリスク評価ツールが実効性を伴うかが、発行されるカーボンクレジットの品質を左右する。
温暖化係数の高いガスの削減は、即効性と費用対効果の面から、国連メカニズムでも優先度の高いアジェンダの一つとして位置づけられる。
