ルイ・ドレフュス・カンパニー(Louis Dreyfus Company、LDC)は8月19日、インドのスタートアップ、ヴァラハ(Varaha)と炭素除去(CDR)カーボンクレジットの5年間契約を結んだ。契約に基づき、LDCは2025年から年間6,000トンのCO2除去分を調達し、持続可能な小麦を顧客に供給する。これはグローバルサウスにおける農業由来の大規模インセッティング事例として注目される。
今回の取り組みでは、ウッタル・プラデーシュ州の約2,000エーカーに及ぶ農地で約430戸の農家が参加し、稲と小麦の輪作を行う。従来は稲わらを焼却して小麦作付けを準備していたが、本プロジェクトでは専用播種機を用いて稲わらを粉砕し土壌に還元、同時に不耕起播種を行う。この「残渣処理+不耕起」の組み合わせにより土壌炭素量を増加させ、大気中のCO2削減につなげる。
ヴァラハは土壌サンプリングやモニタリングを含む実施管理を担い、Verraの農地管理改善手法(v2.1)に基づき第三者検証を受ける。生成された小麦はデジタル追跡システムで圃場から倉庫まで分別管理され、LDCは「低炭素小麦」として販売する計画だ。
LDCのグローバル炭素商業ディレクター、ナタリア・ゴリナ氏とインド農業研究責任者ガンガダラ・スリラマッパ氏は共同声明で「本イニシアティブは、より強靱で低炭素な農業サプライチェーン構築と高品質なCDRカーボンクレジット創出を両立させるものだ」と述べた。
契約期間は2030年までを想定しており、LDCが前払いする資金で農家は機械レンタルや転換コストを賄う。収益の60%は農家に還元され、4年目以降には収量増加や肥料・水の削減効果も期待される。ヴァラハのマドゥル・ジャインCEOは「行動変容には複数年の支援が不可欠だ」と強調した。
ヴァラハは再生型農業に加え、植林、岩石風化促進、バイオ炭など複数のCDR手法を展開しており、2025年にはCDR.fyiのサプライヤーランキングで上位3社に入った。同社は南インドでバイオ炭施設を運営しており、Puro.earthに登録済みである。
今回の案件は、炭素金融が農業慣行を根本から変革しうることを示す「実証モデル」と位置付けられる。LDCは「顧客のスコープ3削減ニーズに応えると同時に、低炭素農産物の新市場を開拓する」としており、プロジェクトの成果次第で契約延長も視野に入る。
参考:https://in.linkedin.com/company/varaha-carbontech?trk=public_post_feed-actor-image