日系企業のプラスチッククレジット市場参入が始動、ラオスで794トンを初創出

カーボンクレジット.jp 編集部

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カーボンクレジットおよび再生可能エネルギー証書の創出事業を手がけるグリーン・アンド・ブルー・プラネット・ソリューションズ(Green & Blue Planet Solutions、以下GBP)は5月15日、ラオス・ビエンチャンで実施するプラスチック廃棄物回収プロジェクトについて、ベラ(Verra)が運用するプラスチック廃棄物削減プログラム(PWRP)下で794トンの回収クレジット(WCC、Waste Collection Credit)の認証を取得したと発表した。

GBPによれば、日系企業によるプラスチッククレジットのプロジェクト登録・創出事例は本件が世界初である。

本案件は単独のプロジェクト認証にとどまらず、グローバルなプラスチッククレジット市場における日系企業のプレゼンス確立に向けた起点として位置づけられる。カーボンクレジット市場で先行する欧米プレイヤーに対し、日系勢は創出側でのプレゼンスが限定的であった構造を踏まえれば、新興のプラスチッククレジット市場での早期参入は戦略的意味を持つ。

LaoRefuelプロジェクトの全体像

本プロジェクト「LaoRefuel」は、GBPがラオカヤマ(Lao Kayama Sole、親会社:加山興業)およびサワンEMC(Savan EMC、以下SEMC)と共同で2024年に開始した取り組みである。ラオスの首都ビエンチャンで産業由来の難リサイクル性プラスチック廃棄物を回収し、廃棄物固形燃料(RDF、Refuse Derived Fuel)に加工したうえでセメント工場の代替燃料として供給する。

プロジェクト全体では年間2,377トンのプラスチック廃棄物回収、セメント工場における化石燃料からRDFへの転換による年間4,677トンのCO2削減効果が見込まれる。今回認証されたWCC 794トンは、1年間のモニタリング期間中の実回収量に基づく発行分である。

プロジェクトはベラのレジストリにプロジェクトID「PWRP 5554」として登録されており、第三者検証を経た発行となっている。

ベラPWRPにおける2系統の方法論

ベラのPWRPは、プラスチック廃棄物の回収・リサイクルによる環境価値をクレジット化する方法論パッケージである。発行されるプラスチッククレジットは2系統に分かれる。

回収クレジット(WCC)は環境への投棄を回避した回収量に応じて発行され、リサイクルクレジット(WRC、Waste Recycling Credit)はバージンプラスチック素材の使用回避量に応じて発行される。両クレジットは独立した環境価値として扱われ、同一プラスチックに対して回収・リサイクル両工程を実施した場合は2種類のクレジットが並行発行されうる。

本案件はWCC側での認証であり、リサイクル工程を経由せずRDFとしてセメントキルンで共処理する経路でも回収段階のクレジットを獲得できる構造を示している。

プラスチッククレジット市場では、回収から最終処理(リサイクル/焼却/埋立)までを一気通貫で実施するプロジェクトのみがクレジット化対象になるとの誤解もあったが、本案件は回収+セメントキルン共処理の組み合わせでもPWRP方法論の要件を満たしうることを実証した点で先例的価値がある。

永続性・追加性をどう評価するか

プラスチッククレジットには、カーボンクレジット市場で議論されてきた永続性・追加性の論点が異なる形で適用される。

永続性については、回収・処理されたプラスチックが再び環境中に流出しないかが論点となる。本案件のようにセメントキルンで完全燃焼処理される場合、物理的な不可逆性は確保される。

一方で、サーキュラーエコノミー観点ではマテリアルリサイクルを優先すべきとの議論もあり、サーマル利用主体のプロジェクトをWCCで評価する妥当性をめぐっては、市場関係者の間でも見解が分かれる。ただし、リサイクル困難な複合素材・汚損品の処理経路として、セメントキルン共処理がプラスチック廃棄物管理の現実的選択肢であることも事実である。

追加性については、ラオスのような廃棄物管理インフラが脆弱な国において、クレジット収益がプロジェクト成立の不可欠な要素となっているかが問われる。先進国の既存リサイクル体制下のプロジェクトと比べ、メコン地域での新規回収体制構築は追加性を主張しやすい立地条件にある。

プラスチッククレジット市場の黎明期

ベラPWRPは2021年に方法論を公表し、本格的な認証発行は2023年以降に始まった新興市場である。グローバル発行実績はまだ限定的であり、プロジェクト数・対象国・方法論バリエーションのいずれも拡大途上にある。

カーボンクレジット市場と比較すると、プラスチッククレジットにはパリ協定6条のような国際協調枠組みが存在しない。一方で、現在交渉中のUNプラスチック条約がクレジット制度をどう位置づけるかが、今後の市場拡大の鍵を握る。

このため、現段階のプラスチッククレジット市場は、方法論側(ベラPWRP等の運営機関)と先行プロジェクト側の双方が品質基準と市場慣行を形成していくフェーズにある。日系企業によるプラスチッククレジット創出案件としての世界初という位置づけは、カーボンクレジット市場における日系プレゼンスの薄さを踏まえると象徴的価値が高い。

本案件は、東南アジアでの廃棄物管理事業の延長線上から新興環境価値市場への参入経路を切り拓いた点で、後続事例の参照モデルとなりうる。

ただしWCCのみによる発行モデルが、サーキュラーエコノミー観点を重視する欧州系バイヤーや今後整備される品質ガバナンス側からどう評価されるかは未確定であり、UNプラスチック条約の制度設計動向と併せて、本案件の真価が問われるのは今後数年の市場形成過程である。

参考:https://jp.gb-planet.com/press-release/verra-pwrp-5554-20260515.html